2013年5月2日木曜日

少年と原子

米IBMが1日、分子一つひとつを動かして作ったパラパラアニメーションを発表した。男の子がボール(原子)と戯れる様子を描いた約1分のストーリー。ギネスワールドレコーズ社が「世界最小のパラパラアニメ」と認定した。

研究チームは、銅板の上に一酸化炭素の分子を置き、絶対零度近くまで冷やして動きを止めた。そして走査トンネル顕微鏡(STM)と呼ばれる装置で少しずつ動かして、一コマずつ撮影。242コマをつないで「少年と原子」と題する作品を完成させた。一コマの実寸は10万分の4ミリほどしかない

ムービーの制作に使用された走査トンネル顕微鏡(STM)はIBMが開発した物質の表面の電子状態や構造を原子レベルで観測する顕微鏡。
この顕微鏡は1981年にIBM研究所で発明された。非常に鋭く尖った探針を導電性の物質の表面または表面上の吸着分子に近づけ、流れるトンネル電流から表面の原子レベルの電子状態、構造など観測する。また、針先の電圧で物質表面の原子をくっつけたりはじき飛ばしたりして原子を移動させる

1989年9月28日にIBM社の物理学者Don Eigler氏が個々の原子を操作、配置することに世界で初めて成功。その2カ月後には、35個のキセノン原子を配置して「IBM」の文字をつづることに成功した。この3文字をつづるのに約22時間を要したが、現在では同じ作業が約15分でできる。

原子で文字を書くことが出来るのは上記ニュースから知っていたが、まさかこの技術でアニメーションを作るとは思わなかった。その動画はネットでアップされているので観ることが出来るが、非常に出来が良く、原子で作れれていると言わなければ分からないレベルだ。
作品は原子で作られた「少年」と一個の「原子」が仲良くなり、楽しく遊ぶ様子が描かれている。少年と原子は、踊ったり、キャッチボールをしたり、トランポリンの上を跳ねたりする。描かれている「原子」は本物の原子であり、「少年」も原子から作られている。実際の人間ももちろん原子で構成されている。そう考えると非常に感慨深い。

このアニメーションは、大げさな言い方をすると先端科学と芸術の融合だ。基本的に科学と芸術は相容れない部分も多い。科学とは文明であり芸術は文化であるからだ。
一般の人間には作ることは非常に難しいこのアニメーションであるが、文明と文化が融合できることを端的に表した素晴らしい作品であると思う。

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