レス・ポールと聞いて、ギターの名器のギブソン社製レスポールモデルを思い出す人が多いのではないだろうか。しかし、レスポールは実在した人物である。
エリック・クラプトンやキース・リチャーズ、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、エドワード・ヴァン・ヘイレンなど名だたるミュージシャンたちに愛用され、エレキ・ギターの代名詞となった「レスポール」の産みの親がレス・ポールであった。
1915年6月9日、アメリカ、ウィスコンシン州生まれ。
1930年代よりミュージシャンとして活動をスタート。彼は元々がギタリストであり、現在までに50枚のシングルと35枚のアルバムをリリース、累計で合計3千万枚以上のレコードセールスを記録している。1940年代に世界で初めてソリッド・ボディのギターを発明し、その後、レコードのカッティングマシーンを自作。多重録音を可能にしたり、アナログディレイマシンの原型を発明した。
1951年には妻のメリー・フォードとのデュオ、レス・ポール&メリー・フォードの『ハウ・ハイ・ザ・ムーン』が全米一位を獲得。その翌年、ギブソン社初のソリッドギター“レスポール”が発売される。人気の低迷や、離婚、耳の鼓膜が破れるという事故に見舞われるも、1974年現役復帰。1976年チェット・アトキンスと作成した「チェスター&レスター」で1977年グラミー賞を受賞。今までに5 度グラミー賞を受賞しているほか、1988年には、後世のロック・アーティストに影響を与えた人物に贈られる、ロックの殿堂のアーリー・インフルエンス部門に殿堂入りしている。また、2005年には8トラック・テープレコーダーやギブソン・レスポールの功労により、ミュージシャンとして唯一「発明家の殿堂」入りを果たした。
キース・リチャーズは「彼は俺たちに最高のオモチャを与えてくれた」とコメントしている。エディ・ヴァンヘイレンは「彼がしてくれた事が無ければ、自分は今していることの半分も出来なかった」とも言っている。
またカーペーンターズのリチャーズ・カーペンターもレスポールの多重録音を初めて聞いた時、非常にショックを受けたと述べている。幼かった彼は多重録音されたメリーフォードの歌声を聞いて、母親に「どうやったらあんなに歌えるか?」と尋ねた。それに対して母親は「一生懸命練習すれば歌えるようになる」と答えたらしい。
全くもってレス・ポールがいなければ、現代の音楽産業の復興はなかったのである。
レスポールはその名を冠したギターだけでなく、その音楽性においても多大なる影響を多くのミュージシャンに与えた。否、彼はミュージシャンという範疇に治まらないアーティストであり、発明家である。それはまるでルネサンスにおけるレオナルドダヴィンチの如く、ITにおけるスティーブジョブスの如くであった。
レス・ポールは93歳になってもニューヨークのJAZZクラブで毎週月曜日にステージにあがっていたが、2009年8月13日、肺炎によりニューヨークの病院にて94歳で死去。
今後彼のような偉大なアーティストが出てくるかどうか。不世出の巨人といっても過言ではないであろう。
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